〔振り返りシート〕について

◆村上が関わっていた時期の府中高校の学びの変革においては,〔学びと成長のストーリー〕の作成と提示による推進,〔ICEモデル〕の府中高校版への整理とその実態化(この充実の主なものが,振り返りシートの充実と考査における活用問題のルーブリック評価の工夫),そして実際の授業改善の推進が大きな柱であり,それらが一体的に繋がって機能することを重要視しました。

 

◆振り返りシート作成の着手段階は,谷田教諭と村上が論議しながら,生徒が自分の学びについて,質的な面・量的な面・時間幅的な面から〔ICEモデル〕による自己評価を行うことによるものでした。教科(科目)の学びは,単元のまとまりを軸にすることとし,自分の学びの全体的な自己評価(振り返り)は学期単位で行うことにしました。

 

◆次の表は,平成30年度までに府中高校で取り組んできた振り返りシートの概要をまとめたものです。

 〔授業ごとの振り返りシート〕

 〔教科(科目)の授業内容の単元の振り返りシート〕

 〔総合的な学習の時間の振り返りシート〕

 〔自らの〔学び〕の振り返りシート〕

 〔学びのつながり振り返りシート〕

があり,同じように振り返りシートと称しても,対象期間,場面,視点などにはかなりの違いがあり,それぞれの意義があります。全体整理表の次に,分類項目シートごとに事例を取り上げて説明をしています。

 

〔A〕授業ごとの振り返りシート

◆基本的には,ほとんど全ての科目で,50分の授業の終わりや使用教材プリントの区切りの場面などで,生徒による記入の工夫も含めて,振り返りの場面を多く設けています。教科としてまとまって行っている事例もあれば,個々の教諭が工夫して行っているのもあります。

◆学校としての整理したシート様式のものがあるのではなく,教科や個々の教員が教材プリントの末尾に振り返りの視点と記入欄を設けたり,視点を明記しての5段階自己評価を記入する方法などの工夫を行っています。こうしたことは,今の広島県の県立高校では,どの学校においても普通に取り組まれていることだと思っています。

 

 

〔B〕教科(科目)の授業内容の単元の振り返りシート

◆〔ICEモデル〕に基づいて,教科の学びを振り返るには,単元として一定のまとまりがあるのが好都合と思われます。また,生徒が自己評価の根拠を,自分の言葉で表現できるようになるのも大事なことだと思います。

◆着手当初は,当時の国語・数学・英語の教科主任に依頼して,他の教科の人にも参考になりそうなものをサンプル的に作成してもらい,教科内での論議を経て,全体へも提示して,他の教科も取り組むことになりました。

◆次の3つの振り返りシートが,当時の雛型になったものです。 

〔C〕総合的な学習の時間の振り返りシート

◆着手当初は,この次に取り上げている「自らの〔学び〕の振り返りシート」が総学の振り返りの面も併せ持つ考えで実施していましたが,総合的な探究の時間も視野において,総学自体の振り返りの意義を明確にする観点から実施することにしました。

◆次に示しているのは平成30年度版であり,指定を受けている課題発見・解決学習推進の統括者である豊田昇教務主任と推進リーダーである藤井智美教諭が論議しながら作成し,実施したものの一部です。名称は府中高校セミナーⅠとなっています。

 

〔D〕自らの〔学び〕の振り返りシート

◆〔ICEモデル〕の「学びの評価表」に基づいて,まとまった期間の学びを生徒自身が振り返るためのシートとして,当初の段階で,谷田教諭と論議しながらまとめました。

◆その後,ほぼ同じ内容で実施してきており,自己評価結果について,当時の学年やその後の入学生のデータも蓄積されていることから,比較分析が可能になってきています。

◆このシートは,他のシートと異なる面があり,縦軸が「B・A・S」の三段階になっていて,順序が逆になっています。「府中高校における学びに関する動詞に基づく学びの評価表(基本形)」のフレームに基づいた自己評価シートという要素を意識しての設定にしてあります。

 

〔E〕学びのつながり振り返りシート

◆このシートを作成するに至った背景に,当時の下崎教育長から県立の校長全体に「各校において,生徒・教員に意義のあるカリキュラムマップを作成するように」と要請・指示されたことと,村上が,生徒の教科学習の内容的な連関性(つながりや学びの構造理解)を考えさせる機会を設けたいと思っていたこととが重なり,生徒自身が学びのつながりを整理することにより学びを深める場面となるように設定したことがあります。

◆このカリキュラムマップの観点からは,別途,教諭が授業展開上のどの教材や場面で,生徒にどのような力を付けようとしているのかを整理しようとして,全教科が関わって〔付けるべき力のストーリー〕を作成しています。この言わば「第(Ⅳ)のストーリー」とも呼べる〔付けるべき力のストーリー〕は,〔付けるべき力〕について,一度は作成し終わったものの,まさに,資質・能力論議に重なり,「学びに向かう力」などを入れ込んだ「府中高校で育成する資質・能力のルーブリック」(平成30年12月)において整理した資質・能力に対応するものに高めていく必要がありました。

◆ここでは,平成30年度版の〔学びのつながり振り返りシート〕の一部をサンプル的に整理したものを掲載していますが,指定を受けている課題発見・解決学習推進の統括者である豊田昇教務主任と推進リーダーである藤井智美教諭が前年度までのものを踏襲しつつ,論議を深めて作成し実施したものをベースにしています。

◆これ以前にも前年までにおいて複数の〔学びのつながり振り返りシート〕を作成・実施を行ってきています。まさに,教材開発の試行錯誤の繰り返しの営みを経ながら,平成30年度版にたどり着いています。 

◆サンプル版ですが,掲載の都合上,半分に分けて掲載します。枠の大きさ等は,便宜的に調整しています。