探究問題(教科・科目における探究課題)について

◆探究問題については,考査問題における活用問題,合教科活用問題の次に取り組むべきこととしてイメージしてきていましたが,府中高校在職中には実現までの運びができませんでした。

◆年間の授業計画の中に位置付け得ること,生徒の学びの深まりに繋がること,すべての教科・科目において実現可能性があること,必要となる教員の労力が一定範囲内で教員自身も意義を感じることができる内容であること・・などが基本条件であると思っていました。

◆新しい学習指導要領において「探究」との関連付けが明確となり,「総合的な探究の時間」や探究科目が設置されるなど,状況は大きく変容しつつあります。学校現場における対応も,方向性を見据えた上で,具体的で実践的な取組みにチャレンジすることが必要だと思っています。

 

◆次の資料は,村上がイメージしていたものをまとめてみたものです。特徴的なことを述べますと,次のようなことになると思っています。

(1)年間の授業計画に位置付けることとし,1時間枠(50分)設定とする。

(2)「探究プロセス」と呼ばれる【 課題の設定 ⇒ 情報の収集 ⇒ 整理・分析 ⇒ まとめ・表現 】を組み込んでいること。

 ※「探究」について,何か特別に深いことを生徒に実感させないと不充分ではないかとの思いを持った教員にたくさん出会いますが,まとまった時間を掛けて取り組む「総合的な学習の時間」などでの「探究課題」とは少し次元的に異なる発想から,村上は50分で行うことの意義をむしろプラスに捉えています。「探究プロセス」を複数の教科・科目で実際に複数回体感することで生徒に身に付くことは多くあると思っています。

(3)「考えるための技法」について,活用したり,体感できたりする場面としても有効度が高いと思えること。ICEモデルとの整合性も図りやすいと思っています。

(4)生徒による「相互評価」を限られた時間内に行うことにより,他者の論述から学べること,評価の判断から学べること,自己評価への還元などが期待できること。

 ※教員がすべてを採点・評価するという考え方はしていません。こうした取組においては,教員は採点・評価を直接するのではなく,生徒が採点・評価したものを点検・評価すれば充分だと思いますし,効率的だとも思います。

(5)説明文・論述文の書き方については,文の全体構図の組み立て方,根拠の示し方,表現の仕方など,別途,国語の授業を軸として,「総合的な学習の時間」などで指導・実践することが想定されますが,すべての教科・科目においても連動した指導・実践を行うことが一層有効だと思っています

 

◆この「探究問題」の類の取組を試みられたり実践されておられる方がおられましたら,是非ともご連絡いただければと願っていますので,よろしくお願いいたします。

 

〔探究〕と〔調べ学習〕との関係について

◆「総合的な探究の時間」が導入され,教科・科目においても探究,探究的な学びが重視されるようになってきている中で,「探究」についての特別視,身構えとも呼べる現象が高校現場に生じてきていると感じています。

◆その一つの要素として,今まで,教科書や資料集・図録・授業プリントなどを用いて,教員がテーマを指示して生徒に調べさせたり,生徒自身に「疑問に思ったこと」を特定させて調べさせたり,話し合わせたりしていたことと「探究」として情報の収集を行うこととの関係性が未整理になっていることがあると思っています。

◆さらに付言すれば,テーマ設定(問い)は生徒自らが行うべきこと,自分で主体的に調べる要素がないと探究とは呼べないのではないか・・との論議が出ています。

◆村上の考えでは,テーマ設定(問い)は,生徒が自分で学び深めることに繋がる問いや本質的な問いを設定できれば,それは理想として目指す姿としては理解でき,大事なことだとは思いますが,現実に今までの教科・科目の学習を成り立たせていた教員と生徒との関係性においては,ことは簡単ではないと思っています。⇒ 生徒の「問いをたてる力」を引き出す,高めるには,教員の側がそれなりの研修と試行錯誤の営みをする手順と時間が必要だと思っています。

◆「総合的な探究の時間」の探究と教科・科目の探究については,何が同じで,何が異なるかの基本的な理解が大事になると思っています。ここでは,「探究」と「調べ学習」について,概念的なことと実際の授業での設定可能時間との要素で分類してみました。図の緑色のところが関わりの深いところだと思っています。