〔2〕教育課程案件について

《必履修科目の未履修問題》

◆教育課程に係る危機管理の要素は,必履修科目の未履修問題と適切な授業時数の確保が主なテーマになります。これ以外にも,政治的中立性に関すること,教科書の採択等に関すること,単位認定に関すること,成績処理に関することなど,教育課程に関連することを法令規則・ルールに則って行うことが当たり前だけに,適切にできていない場合は,不祥事案件となりますので,危機管理の側面から認識しておくことは重要です。
◆必履修科目の未履修問題
広島県では,過去複数回,この未履修問題が顕在化しました。最も大きく焦点化したのは平成13年度で,是正指導の取組が行われた中で未徹底の部分が顕在化した事態になりました。指摘事項の中にも「授業時数の確保」はありましたので,当時の現場でも科目の授業時数の確保には留意していた面はあるものの「未履修問題」は,少し様相が異なる要素が介在していました。

◆この時に未履修問題に取り組んでいたことで,全国的に未履修問題が焦点化した平成18年度には,県立高校は,大きな波を受けることまでにはなりませんでした。
◆次の表は,平成13年度の未履修問題について,関わっていた管理職・教員について村上が推測的に背景分析を試みたものです。視点としては,現在の時点で,危機管理的な意味で未履修問題へのスタンスを整理しておくためのものです。
◆背景環境が大きく様変わりしており,法令規則遵守の意識や仕組,大学受験に対する学力の捉え方なども大きく変化していて,現在のところ大きな(意図的,組織的な)問題は起きないだろうと思っています。少し懸念があるとすれば,シラバスや考査問題の確認システムが,学校によって差が大きく,結果的に教科書の一部の領域が未履修に終わるケースが生まれる可能性があるというところだろうと思っています。

 

《適切な授業時数の確保》

◆〔★カリ・マネの実際〕の《授業時数確保と時間割編成の考え方について》のところで述べていますように,高校において,バランスよく適切に授業時間数を確保することはかなりの難問です。その背景には,大きく二つのことがあると思っています。一つは,科目数が多く,習熟度展開や専門領域も介在して非常勤講師に頼る割合も高くて時間割変更が容易でないことから授業曜日のバラつきがレッスンクラスの実施授業数,科目の実施授業数のバラつきに直結してしまうこと。いま一つは,1単位時間を50分として,35単位時間を1単位とすることの標準性の規範度が,実質的に曖昧な面を持っていることです。小学校・中学校の標準授業時数ほどには,厳密性が論議されていない状況だと思っています。

◆私見ですが,必履修科目の多くが1・2年生に配置されていること,卒業までの履修単位数の下限が74単位(学年25単位⇒1日5時間平均)であること,高校三年生の「次のステージ」との関連性が大きいこと(広島県はほとんどの高校が3月1日に卒業,それ以前から大学受験や就職に備えての免許取得等の動きがあります)などが間接的に影響しているのではないかと思っています。

◆とは言え,学習指導要領に「標準」の定めがあり,本来的に,生徒に適切に学力を付けることを前提にした単位数設定であり,それに見合う教科書になっているわけですので,すべての科目をバランスよく,適切な形で授業時数を確保していくことは,特に,管理職は明確な自覚を持つ必要があると思っています。未履修問題で取り上げたように,平成13年度当時と現在との背景環境の変化から読み取れることは,現在と5年後,10年後の変化をどのように読み取って,学習指導要領の「標準」の定めに対して,適切なカリキュラム・マネジメントを心掛けるかということだと思います。気付かずに「落とし穴」にはまり,挙句には「不祥事」の範疇にならないようにするには,不祥事エリアの近くに位置するのではなくて,「標準的な姿」のエリアに位置することだと思っています。