【11】酒井先生の著書紹介『数学の授業づくり』

 酒井淳平先生が,明治図書から『高等学校 新学習指導要領 数学の授業づくり』A5判 160頁 1900円+税)を出されましたので,ご紹介いたします。

 

《表紙》

《章立て》


◆ 私なりの受けとめを端的に文字化してみると,酒井先生らしい,《つの大きな視点》(新学習指導要領の捉え,数学自体の意義・価値の捉え,教育自体の意義・価値の捉えの3つ)と,「一つ一つの授業,一人一人の生徒の学び」を大事な基盤と捉える《現場立脚視点》との繋がり(連関・相関)を自在に往ったり還ったりしながらの「授業づくり」の捉え方・考え方・実際手法が一冊の本として整えられている印象です。

 

◆ 同著は,明治図書のホームページを見ますと,高校の教員向けに「新学習指導要領を教室の学びに落とし込む!」としてシリーズ化されているものに位置付いています。〔大きな構え〕で組み立てられている印象の新学習指導要領の内容を,実際的に高校の授業現場〔教室の学び〕と結びつけることの企図の中に,高校教育の現在状況の幾つかの様相を感じ取れるように思います。

*「国レベルの大いなる教育理念・方針・考え方」と,全国の高校の幾つもの教室の場面で生じている「現場の授業の個々の実際的な意義」とを,誰が,どのような手順・手法で結びつけることができるのか ・・・ 国・県レベルの「伝達講習」の流れだけで,「結びつけること」ができているのか,現状はあまりに不充分な状態なのか・・

*「今までの自分なりの授業手法」で20年・30年と授業を成り立たせてきていた教員にとって,新学習指導要領の内容を受けとめたり,授業に活かしたりすることが本当に大丈夫なのか・・

*理念上では,今までも高校現場において観点別評価が行われているはずだったにも拘わらず実態化していなかった状況のもとでの観点別評価の今回の実働化は,きちんとした整合性などが機能するのか,しているのか・・

 

◆ こうした高校現場の懸念に対しては,それぞれの学校が「育てたい生徒像,育てたい資質・能力」を明確にしながらのカリ・マネの推進,授業づくりの工夫改善に努めているところですが,実際的な勘所の大きな要素として,「育てたい資質・能力」に基づいて,教科ごとに実際の年間授業計画・評価計画,そして授業展開の具体,更には評価が噛み合っているかどうかが大事なことであり,ここが機能するかどうかが学校全体の教育水準に大きな影響を与えることと思います。

 

◆ 数学に門外漢の私の見方でしかないのですが,もし,自分が今時点の高校の校長をしていたら,まずもって自校の数学の教員全員にこの本を読んでみることを勧めるだけでなく,この本の内容的なことの捉え方・考え方について,自分たちの捉え方・考え方と対比的な整理くらいを求めたい気持ちになっています。同時に,数学以外の教科の教員にとっても,同等の意義がある内容だと受けとめています。

 

◆ 就中,私見的には,第7章の視点・捉え方に私自身のものと根幹的に同質の要素を強く感じさせていただくとともに,それの文字化の妙に格別の愛着の思いを感じています。(もちろん,第7章以外の内容も本質的には同根なのですが・・。)自校の眼前の生徒との授業の在り方,教科内での「授業の目的・捉え方」の教員相互の共有の在り方など,多くの学校で教科内外を含めての自らによる《見方・捉え方の共有性・異質性の論議》が深まることを期待したいものです。