〔3〕生徒指導案件について

高校現場において,生徒指導案件はどこの高校現場でも日常的にあるのが当たり前であり,多くはまさに通常対応の範囲で過ぎていきます。しかしながら,これらの通常の案件も,危機管理的な視点からの予防対応,未然防止体制の備えが充分でなかったりすると,よほどの大きな案件でなくても,初期対応が適切でなく,対応が後手に回ることになると一気に危機管理範疇の問題になってしまう可能性があります。

◆生徒指導案件に対する基本的な考え方,方策,実際的な対応事例などは,文科省のホームページにおいても,また,広島県教委のホームページにおいても,網羅的で丁寧な資料が豊富に掲載されていて,その意味では村上が付加的に論じる意図はありません。大事なことは,そうした情報をもとに自分の学校に見合う「生徒指導方針」「生徒指導対応方針(マニュアル)」を,どの水準で整備しておき,教員研修等を通して,実態化できているかどうかだと思っています。
◆「生徒指導方針」を整備する上で,どこまでその中に文言として書き入れるかは別として,学校としての生徒指導の前提に「育てたい生徒像,付けたい力」があることが大事になります。生徒指導の大前提に「生徒を育てる」「人間形成を図る」ということが,学校として,教員集団として機能することが必須だと思っています。
◆どこの高校にも起きる通常の案件は,学校として事前に生徒・保護者にも周知している「生徒指導方針」に則って,「生徒を育てる」という大きな目的を明確にしながら,組織的に適切に対応していくことで案件としての区切りを迎えることができるようになっています。

 

◆村上の経験則では,よほどの大きな案件ではなくて通常の生徒指導案件が,通常の範囲を超えた案件になるのは,次の三つのケースだと思っています。

【一つ目】は,案件の事実確認,初期把握が不充分で,対応判断・方針がズレたものになっていて,教員が動けば動くほど(或いは,動かなければ動かないほど)ズレが拡大してしまうケースと,

【二つ目】は,通常の範囲のケースだと捉えた内容に「特殊要素」が介在していて気付けていなくて,結果的に対応判断・方針が機能しないケースです。

そして【いま一つ】は,管理職(特に校長)が対応判断・方針を明確にせず,(或いは,できずに)学校としての対応が後手に回ることで,案件が大きくなるケースです。

 

◆ここで論じる事柄ではないかとも思いますが,学校が機能する上では様々な領域が関連し合っていて,校長は本来それらの全てに精通しておくことが求められていますが,実際には資質・能力には大きな違いがあり,得意領域と不得意領域があるのも当然です。そのことが端的に表れるのが,教務領域,生徒指導領域,パソコン・ネット領域の三つだと思っています。
◆生徒指導領域について苦手感覚のある校長は,判断がどうしても後手になりやすい面がありますし,関係要素を充分に見極めた上での判断になりにくい面があります。教頭,生徒指導主事をはじめ関わる教員が,学校として,チームとしての意識のもとに,状況把握をきちんとして対応方針の原案を明確にして,校長を含めての方針になるような「組織的な対応」を期待したいものです。

 

◆管理職だけでなく,教員の中にも,パソコン・インターネット・SNSなどについて一定程度に使えるという状況でありながら,少し詳しい知識・技能がある教員はそれほど多くなく,こうした類が介在した生徒指導案件については,事実が持つ意味合いを適切に把握・確認することが特に大事になります。
◆また,SNSに慣れている若い教員の中には,生徒とのSNSを介したやり取りについて課題意識・問題意識を持ちにくい感覚の人もいて,何が問題なのかを受けとめにくいケースもあることを,周囲の教員は理解しておく必要があります。教員と生徒との不適切な事案の背景には,SNSを介してのやり取りが介在していますので,不祥事案件を防ぐ意味でも留意が必要です。

 

◆いじめ案件については,教員が生徒への見方について,「決めつけない」ことが大事になります。様々なマスコミ報道では,学校や教委が「いじめと認めた」かどうかがしばしば焦点化しています。広島県では以前から「いじめはどこの学校にも起こり得ることで,いじめと認定することで課題解決に向かうことができる。むしろ,積極的にいじめとして把握しよう」との動きをしてきているので,現場が「いじめ認定」に躊躇する可能性は低いと思っています。
◆いじめ案件対応で留意すべきは,類型化されたパターン的な「決めつけ整理」をしないことが,大事です。いじめの把握は,案件ごとに,どのような生徒の人間関係の関りがあって,誰のどのような気持ちの動きがあって,それに周りの生徒がどのような感情反応をしながら案件が生じているのかなど,冷静で丁寧な把握・分析が必要です。

 

◆次の資料は,生徒指導案件の初期対応の時に,村上がイメージしていながら現職時には形までにはせずに,退職後に整理してみたものです。厳密な記録・報告資料との位置付けはせずに,案件対応で関係教員がバタバタしている時に,校長として把握・確認できていたら良い要素を入れて整理してみました。参考にしていただければ幸いです。

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