〔校内研修〕カリ・マネの研修について

◆高校現場におけるカリキュラム・マネジメントに関する校内研修は,工夫して充実したものにするという年はそれほど多くはなく,学習指導要領が切り替わるようなタイミングや校内で授業改善に向けた取り組みを集中して意識的に行うような場面を除いては,例年通りの前例踏襲になっていることがしばしばだと思っています。
◆小中学校とは異なり,全校をあげての公開研究授業を行うことも通常はなくて,国・県の指定を受けての授業研究会も当該教科等の範囲になるのが通常の例だと思っています。
◆学習指導要領が大きく変容する今回の動きの中では,計画的に校内研修を行うことにより,教務担当者や教科主任以外の全員が新しい考え方や動向について理解し,基本的なこと・根幹的なことについて自分のものにすることが必要不可欠だと思っています。
◆次の資料は,カリキュラム・マネジメント関連の研修項目全体を一枚ものにしています。項目ごとの説明は,そのあとに続けて掲載しています。

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【1】学習指導要領の基本研修

◆学習指導要領についての基本的な理解を全教員ができていることが大事なことだとは思っていても,個人的に時間を設けて学習指導要領を読み込んだりしない限り,理解を深める機会は,実はそれほど多くないのが実状だと思っています。
◆学習指導要領答申(H28)補足資料の中から,「学習指導要領改訂の方向性」「主体的・対話的で深い学びの実現」「観点別学習状況の評価について」の三つに絞って,基本的なことを確認したり,この内容を実際の授業や評価でどのように展開・実施するか・・ということでのグループ協議をしたりすることも意義があることだと思います。

【2】カリ・マネの基本研修

◆管理職や教務関係以外の教員にとって〔カリキュラム・マネジメント〕という用語・概念はなかなか捉えにくく,自分が何をどのようにすることがカリキュラム・マネジメントなのかということをきちんと説明できる教員はそれほど多くないだろうと思っています。
◆自分が授業を行う教科・科目の位置付けや生徒に付ける力の捉え方など,生徒の資質・能力の育成につながる良い授業の実現に向けては,教員一人一人がカリキュラム・マネジメントについてきちんと理解・把握することが重要で,学習指導要領答申(H28)補足資料の「学習指導要領総則の構造とカリキュラム・マネジメントのイメージ」の資料をもとに,自分の捉え方や授業の在り方などについてグループ協議をしたりすることも意義あることと思っています。

【3】育成したい資質・能力のマトリクス

◆ここ数年来の学びの変革の取組を通して,各学校において〔育成したい資質・能力〕についての「見える化」はできているものと思っています。
◆より大事なことは,掲げている〔育成したい資質・能力〕が実際に授業の場面や特別活動の場面で意識して取り組まれているかどうかということであり,学校として,教科として,学年団として,分掌として,個人として計画的に見通しを持って取り組まれているかどうかということだと思っています。
◆サンプル的に作成してみました枠組シートは,枠組み自体を含めて幾つかの方法等が考えられるところですので,研修目的・到達点を明確にしながら工夫した研修にしていただきたいと願っております。

【4】シラバスづくり

◆シラバスについての状況・課題については,〔◇カリ・マネ>★カリ・マネの実際>シラバス〕のページで述べていますので,ここでは割愛しますが,シラバスの意義については認識し学校として作成はしていても,すべての教科・科目や総合的な探究の時間,特別活動までのものがどの水準で機能しているかについては,充分と言える学校は少ないと思っています。
◆今回の新学習指導要領への移行に合わせて,シラバスの在り方自体を校内研修で取り上げてみて,生徒への有効度,作成手順・労力を含めて教員集団として論議しながら組み換えを試みてみる意義は大きいと思っています。
◆シラバスの前提となる教科・科目の年間計画・単元計画については,〔◇カリマネ>★授業の組み立て方〕のところでテーマごとに取り上げていますので,参照いただければ幸いです。

【5】授業展開・授業技法の高め方

◆高校現場の校内研修で,授業展開・授業技法について扱うことは,実はそれほど簡単ではなくて実施できている学校は多くはないだろうと思っています。教科を越えての視点整理が難しいのが要因で,実際的に考えられるのは ◎外部から講師(大学関係者・指導主事等)を招いて授業改善全体の視点・捉え方や事例を扱う中で実際の授業展開事例等が含まれるケース ◎自校教員による先進校視察の内容紹介 くらいではなかろうかと思います。
◆村上が府中高校で実施していた研修は,校内のビデオ撮り授業を複数事例について研修素材化編集して研修に用いるものでした。前提に,教員全員のビデオ撮りが機能していること,どの授業を取り上げるかの特定を誰がどのようにするかなどの隘路があり,実現するにはそれなりの労力が必要でしたが効果には大きいものがあったと思っています。
◆授業技法については,多くの教員が先進事例や工夫事例を知りたいと思っていることと思いますが,教科人数が少ない教科や学校が多いことや,事例把握の機会そのものが多くはないことなどから難しさがあるものと思っています。方策の一つとしてあるのは,校内外の研集会・研究会に参加して学ぶことですが,中でも有効度が高いのが自分も事例を紹介しながらグループ的議を行う《事例の相互共有》だと思っています。

【6】校内授業観察のまとめ

◆ほとんどすべての学校において,授業観察シートを用いて相互に授業を観察し合うことで授業改善の推進を図ろうとする取組(授業相互観察・互見授業など)が行われている段階になってきたと思っています。そうした段階を次の段階に高めるには,実施内容をまず確認し合って共有化する分析・検証を行った上で,学校としての蓄積財産を高めながら次の授業改善の工夫改善点を明確にすることだと思っています。
◆改善方策の第一は,実施内容の「見える化」だと思っています。取組設定期間内での参加状況や授業観察シートの提出状況とその内容の整理(数値等による項目観点別の評価点がある場合は結果集計も)をもとに手応え要素や改善要素等についての分析協議を行うことやその取りまとめを通して,全体としての改善点を明確にして次に活かしていくことが大事です。
◆府中高校では,村上が行った全教員の授業観察票をオープンにしていたことと,グループを編成しての相互授業観察を実施して村上も加わっての事後協議を全員分実施していた(〔★授業観察〕のコーナーで紹介)ことからから,研修会ではグループ協議までは行いませんでしたが,研修会設定によるグループ協議も意義あることと思っています。
◆沼南高校の矢野智之校長の授業観察・授業改善の取組も参考になります。〔◇交流の場>★《矢野智之校長》〕

 【7】公開授業研究会

◆小中学校において通常的に取り組まれている公開授業研究会と同趣旨の公開授業研究会を実施する高校は少ないのが実情だと思っています。背景に,教科授業の専門性・独自性を理由として,そうした〔文化〕とも呼ぶべきものが乏しかったことがあると思っています。従前には教科の専門性・独自性を越える「学校全体としての共通テーマ」の設定自体が難しいと考えられたことがあると思っています。
◆一時期,県教育委員会からの指導もあって学校ごとに公開授業研究会を実施する取組を進めたこともありましたが,各校の実施の取組が時期的に重なることも手伝って指導主事をはじめとして指導助言者の確保の難しさがあること,自分の当日の授業を遣り繰りしてまで他校の公開授業研究会に参加する教員が少ないことなどがあり定着までには至りませんでした。

◆最近では「学びの変革」の推進等をもとに学校としての授業研究のテーマを定めて実施される学校,或いは,国・県の研究開発指定や指定研修を軸にしての公開授業研究会を開催される学校,更には,複数校で連携して相互に公開授業研究会を実施し合う形態が定着しつつあると思っています。
◆村上が関わっていた時期の府中高校も,尾道北高校,福山誠之館高校との三校で合同の授業研究会を年度ごとに教科を特定して行い,三校の教員が一緒になって授業観察・事後協議等を行っていました。数年を経て,福山誠之館高校が別の形での授業研究会を実施されるということで二校での取組になりましたが,公開授業研究会の効率的な実施という面も含めて効果は大きかったと思っています。

◆公開授業研究会を設定する趣旨は,会を設定することにより校内の授業指導力の向上を図ることが第一義になりますので,実施の意義やテーマ設定の意義について校内にきちんと浸透させること,意欲的な取組になるように方向性を定めての研修会を実施することが大事になります。

【8】ICT授業活用技法

◆ICT機器等の授業活用については,かなり以前から多くの教員が課題意識を持ちながらも広島県の高校現場でのICT整備環境が充分でなく,先行的・先進的に校内環境を整えることができた学校を除いては,なかなか実態化することにはなりにくかったと思っています。

◆令和2年度入学生から情報端末機器を保護者負担で生徒全員に持たせる方針が広島県教育委員会から出されて,現在35校が実施準備を進めていること,これに合わせて,全校に情報端末機器使用の基盤となる高速通信網を整備する方針であることが報道されています。
◆広島県内の状況は,先進的に取り組んでいた学校においても各教室でのプロジェクター整備,教員用の情報端末機器整備までの段階でしたので,学年の全生徒がタブレット・ノートPCを持参した状態で授業での活用を図るとなると,教員の準備対応が大きなテーマになります。

◆広島県の高校においては,情報端末機器を実際に授業で活用したことがある教員の絶対数そのものが低い状況であることと学校事情にかなりの違いがあることから,校内での情報共有を全体研修を通して段階的に着実に進めていくことが重要になると思います。その際。大きな視点として次のことが大事になると思っています。
○大前提として,技術的に何がどのようにできるかの理解・把握と連動して,《実現したい授業像,授業を通して付けたい力》を並行して論議する必要があり,そのことは実際に当該校の生徒の授業を行う学校ごとに行われる必要があること。
○授業で実際に活用できる技術的なことの段階的な修得を図る必要があること。
○自校のICT環境基盤の理解・把握とICT機器活用のルールの作成とその実態化が必要であること。

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カリ・マネ(研修用)(DL用).xlsx
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